与信管理コラム 「海外取引における与信管理のポイント」 | 与信管理のナレッジマネジメントジャパン
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「海外取引における与信管理のポイント」
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<支払いを遅らせるのが仕事?>

 2年ほど前に私は、米国の大手コンピューターメーカの日本支社で、与信管理について
 講義する機会がありました。

 そのとき、日本を統括している本社のクレジットマネージャー(与信管理・債権回収の責
 任者)と話したところ、彼は「日本は売掛金の回収率が最もよい国のひとつだ」と言ってい
 ました。これはこのコンピューターメーカ特有のことではなく、多くの外資系企業の日本法
 人にも当てはまることです。

 日本では、企業間の取引では請求書の支払期日どおりに、支払いをするのが大前提=
 常識となっています。これには色々な理由がありますが、ひとつには約束を守ることを美
 徳とする国民性があります。

 但し、最近では債務者保護の視点に立った倒産法の整備が進み、この美徳も忘れられ
 がちで、一部の消費者では「借り得」のように意図的な自己破産も多く見られるようになり
 ました。

 支払期日を守ることが常識となった最も大きな原因は、企業間の決済に約束手形が普及
 している点です。手形の決済では、6ヶ月以内に2回の不渡りを出すと銀行取引停止にな
 り、事実上の倒産を意味します。

 このような厳しい決済のシステムを国の経済インフラとして整備している国は、日本のほ
 かには韓国ぐらいしかありません。

 では、世界的に見ればどうなのか。一日や二日、支払が遅れたところでどうと言うことは
 ないというのが一般的な考え方です。

 更に、欧米の企業の経理部門には、「私の仕事は一日でも支払を遅らせることです。」と
 言う担当者がいるのだから驚きます。

 この理由はキャッシュフロー経営の浸透と決済条件にあります。取引先との関係を悪化
 させない範囲で、一日でも支払を遅らせれば、キャッシュフローに余裕が出ます。

 そして、決済条件もある意味で支払い遅延を助長しています。例えば、欧米で最も一般
 的な決済条件は、Open Account(オープン・アカウント)と呼ばれる条件で、支払遅延に
 対するペナルティは実質上存在しません。

 また、決済の手段には通常、各企業が振り出す小切手が使われます。しかも、その小切
 手を普通郵便で送るだけです。ご存知のように諸外国の郵便事情は、日本と違ってお粗
 末なもので、郵便の到着が遅れるなどは日常茶飯事で、郵便物の紛失も桁違いに多いの
 が実情です。

 ですから、支払期日に到着するつもりで小切手を郵便で送っても、実際の到着が1週間程
 度遅れることはよくあることです。

 債権者もその程度の遅延は容認している節があります。では一体、どの程度の遅延まで
 なら容認されるのでしょうか?これは企業により千差万別です。

 だからこそ、取引先の与信管理方針を理解して、取引先との関係を悪化させず、かつ自社
 の信用格付けに影響がない範囲で、できるだけ支払を先延ばしさせることができるかが、
 経理担当者の腕の見せ所となるわけです。

 こんな商習慣を前提とする欧米企業と取引するのですから、よもや何の保全もない後払い
 での送金取引などは、絶対に避けるべき決済手段だといえます。これは製品を輸入する
 場合にも言えることで、前払いは極力避けましょう。

 「お金は払ったのに商品が届かない」、「注文したものを違う商品が送られてきた」、「商品
 が破損していたが返品が利かない」など、この手のトラブルには枚挙に暇がありません。
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<海外取引における与信管理の5つのポイント>

 (1)取引先を調査する

 「取引先からの紹介であったり、会社案内やホームページが立派であったりという理由
 だけで、取引先を信用して取引を開始したのは良いが、支払期日を過ぎても一向に支払
 がない。心配になって調べてみると、取引先は倒産していた。」

 よくある話です。ひどいのになると、はじめから日本企業をだますつもりであったのでは
 ないかと思える詐欺のようなケースもあります。

 未公開の外国企業の信用調査を行わないというのは、夜道に無灯で車を運転するような
 ものです。いつ事故にあっても不思議ではありません。

 必ず第三者の信用調査レポートを取得してください。できれば、全く別の2社からレポート
 を取得して、比較検討できればより確実です。

 (2)取引先を分析し信用度に応じて格付けする

 取得した調査レポートの格付けや倒産確率などを参考に、自社独自の信用ロジックを加
 味して、取引先を信用度に応じて社内格付けします。

 社内格付けに対応した決済条件や与信限度額、取引方針をあらかじめ決めておくと、
 効率的に一貫した与信判断を下すことができます。

 (3)メールの注文やInvoiceだけではなく、契約書をしっかり締結する

 当社の経験値では、海外取引でトラブルを抱える企業の8割は、契約書を締結していま
 せん。しかもその理由はほとんど共通しています。

 「今まで契約書なしでも特に何の問題もなかったから。」

 これが債権者の犯す最大の過ちです。問題が起ってからでは遅いのです。もちろん契約
 は、口頭でも成立するし、申込とそれに対する受諾があれば成立します。しかし、トラブル
 になると、契約の有無が交渉の優位性を大きく左右します。

 (4)支払い遅延には早くて3ヶ月、長くても1年以内に回収できるよう社内体制を構築する

 債権は遅延期間が3ヶ月を超えると回収率が大きく低下します。遅延期間の経過に応じて
 回収率が低下するのは、債務者が倒産するためです。

 欧米の企業は、支払期日から90日以上の遅延を目安に、コレクション・エージェンシーな
 どの第三者に対して回収代行を依頼します。あなたの会社でも、90日をガイドラインとする
 ことをお 勧めします。

 自社で遅延債権を回収できない場合に備えて、海外のコレクション・エージェンシーなど
 第三者による回収手段をあらかじめ持っておくと良いでしょう。

 (5)海外向けの与信管理規定を策定する

 会社として海外の与信管理を徹底するには、社内共通のルール作りが欠かせません。
 一般的に、国内の与信管理に関する規定はほとんどの会社で設けています。

 ところが、海外向けとなると、ほとんどの会社は国内の与信管理規定をそのまま使っている
 か、暗黙の了解によって与信管理を行っています。

 カントリーリスクを始め、信用情報の種類、決済条件、担保や保証など、与信管理を取り巻く
 環境は、国内外では大きな差があります。

 極論すれば、法律や会計制度の異なる国別に規定を設けるのが理想ですが、現実的には
 一部の大手企業を除き、与信管理にそこまで時間とコストをかけることができないのが現状
 です。

 まずは、海外向けの与信管理規定を整備することから始められてはいかがでしょうか。


 ナレッジマネジメントジャパン株式会社
 代表取締役 与信管理コンサルタント
 牧野 和彦
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