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                        | 与信管理入門 第5回 「商業登記簿のポイント」 | 
                      
                      
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                  定性情報の中でもひときわ重要なのが、商業登記簿と不動産登記簿である。 
                   
                  商業登記簿には、「現在事項証明書」と「履歴事項証明書」、「閉鎖事項証明書」などがある。 
 
                  商業登記簿はインターネットで取得できる。昔のように、法務局まで出向く必要がない上に、値段も法務局で取得する場合の半額以下と安い。ただし、証明書としては使えない。 
 
登記情報提供サービス 
http://www1.touki.or.jp/gateway.html 
 
                  与信管理で使用するのは、「履歴事項証明書」と「閉鎖事項証明書」である。 
                   
                  現在事項だと現在有効な事項の確認しかできず、取引先の過去が分からないからだ。 
 
商業登記簿で確認するポイントは4つである。 
 
                  (1)社名や本店所在地の頻繁な変更はないか 
                  (2)登記の目的は取引先の事業内容と合致しているか 
                  (3)資本金はいくらか 
                  (4)役員の構成におかしな点はないか 
 
                  (1)社名や本店所在地の頻繁な変更はないか 
 
                  過去の不祥事や約束手形の不渡り記録などを隠すために、社名を変更するケースがある。意味のない変更や頻繁な変更がないかを確認する。本店所在地も同じである。 
 
                  商業登記簿は、法務局の管轄ごとに作成される。取引先の本店所在地が法務局の管轄を超えて移転すると、新しい登記簿が作成される。 
 
                  その場合は、いくら「履歴事項証明書」を取得しても、前本店所在地におけるその取引先の過去は掴めない。 
                   
                  その場合には、「閉鎖事項証明書」を取得して過去を調べることになる。 
 
                  (2)登記の目的は取引先の事業内容と合致しているか 
 
                  会社定款は登記の目的に記載されている。これが、取引先の事業内容と合っているかを確認する。 
                   
                  本業とは関係の無いような企業が登記されていないか、登記されていない事業を営んでいないかなどを確認する。 
 
                  また、いわゆるパクリ屋などの場合は、登記の目的を一見しただけでは、何の会社か分からないほど、幅広い業務内容が登記されている場合がある。 
                   
                  要注意である。 
 
                  (3)資本金はいくらか 
 
                  会社法施工前は、有限会社は300万円以上、株式会社は1000万円以上という最低資本金制度があった。 
                   
                  しかし、現在はこれが撤廃されたため、株式会社であっても、資本金がいくらか推測できない。 
 
                  文字通り、1円の資本金でも株式会社を設立できるわけである。 
                   
                  ホームページや会社案内に記載されている資本金と登記されている資本金の額が同じであるか確認する必要がある。 
 
                  (4)役員の構成におかしな点はないか 
 
                  役員の構成を見れば色々なことが分かる。例えば、姓が同じ役員で構成されていれば、同族企業だと推測が付く。 
                   
                  例えば、同族企業で実務上の実権はご主人が握っているのに、登記上の代表取締役は奥さんである場合などがある。 
 
                  何らかの理由でご主人は役員になれなかったわけだ。 
                   
                  過去にご主人が会社をつぶして、個人も自己破産をしていて、ある間、役員になれなかった可能性もある。 
 
                  また、代表取締役のみ自宅住所が登記事項になっている。 
                   
                  不動産などのさしたる資産を持たない零細企業でも、代表取締役が自宅の不動産を所有していれば、そこから、資産背景が調査できる。 
                   
                  ただし、2024年10月1日により、「代表取締役等住所非表示措置」が開始され、登記時に申請することで自宅の住所を非表示にすることが可能になる。 
                   
                  零細企業はもちろん、中小企業でも会社の財政状態と代表取締役の個人の家計はリンクしている。 
                   
                  会社の業績が良ければ家計も潤う。業績が悪ければ家計もきつくなる。 
                   
                  従って、個人の不動産の担保などにもこうした部分が反映されてくる。 
 
                   
                   
                  ナレッジマネジメントジャパン株式会社 
                  代表取締役 / 与信管理コンサルタント 
                  牧野和彦 
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