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「ニュースで学ぶ与信管理と債権回収」
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「増加に転じた倒産件数」

東京商工リサーチが2007年1月19日に発表したデータによれば、2006年、
負債総額1千万円以上の倒産は、13,245件、負債総額は5兆5,005億8,300
万円であった。

東京商工リサーチ:全国企業倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/new/zenkoku/year/1176641_809.html

14年ぶりに13,000件を下回った2005年から転じて、2006年は微増ながら増
加に転じた。件数にして275件、比率にして1.9%の増加である。それでも件
数自体は低水準であることに変わりはない。

負債総額は前年対比で17.9%減少して、12年ぶりに6兆円を割り込んだ。中
小企業、零細企業の倒産が多かったことを如実に反映した。

与信管理を行う上で倒産動向は重要な情報であるが、2006年の動産動向で特筆
すべきは次の3点であろう。

(1)中小企業、小規模企業の倒産が多い
(2)倒産件数の全体に占める破産の比率が高い
(3)2006年全体では増加に転じた倒産件数が、直近3ヶ月は減少している。

(1)中小企業、小規模企業の倒産が多い

負債総額が6兆円を割り込んだことでも分かるように、2006年は負債額1億
円未満の小規模倒産が全体の65.4%を占めた。また、従業員数別では、5人未
満の企業の倒産が全体の61.9%を占めた。

更には、中小企業法に定める中小企業の倒産が全体の99.6%を占めている点も
見逃せない。

中小企業基本法の定義は以下のとおり。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38HO154.html

業種             資本金     従業員数
製造、建設、運輸、その他 3億円以下 300人以下
卸売 1億円以下 100人以下
サービス 5千万円以下 100人以下
小売 5千万円以下 50人以下

こうした倒産データは、定性分析の評価項目として活用できる。簡単に言えば、
従業員5人未満の企業は、それだけでリスクが高いということになる。業種別
の資本金や従業員数も上記を参考にできる。

(2)倒産件数の全体に占める破産の比率が高い

2006年の破産件数は7,289件であり全体の55%を占める。会社更生の正確な
件数は分からないが、民事再生法とあわせて1千件もないはずだ。よって、法
的整理における破産の占める割合が圧倒的に多い。

破産が多いということは、債務者には再建の見込みあるいは意思がないという
ことだ。清算型の法的整理と再建型の法的整理のどちらが、債権者への弁済率
が高いかは一概には言えない。

しかし、再建型ではスポンサーなどがつき再生できる企業も多い。取引の継続
から得られる利益から長期的に回収するという戦略も成り立つ。ところが、破
産の場合はそうは行かない。債権者にとっては、貸倒金額が大きくなる可能性
がある。

(3)2006年全体では増加に転じた倒産件数が、直近3ヶ月は減少している。

具体的には10月、11月、12月の倒産件数は前年対比でそれぞれ、0.4%、2%、
3.4%減少した。倒産が比較的多い12月の減少は興味深い。

2007年1月24日の日経産業新聞に掲載されていた2007年の倒産動向に関す
る記事では、調査会社の担当者は両者共に2007年も倒産件数は増加基調だと
コメントしていた。

理由としては、公共工事の削減、地域金融機関における不良債権処理の加速、
長期的な金利上昇、個人消費を冷やす税制改正、グレー金利の廃止決定などが
挙がっていた。

興味深いのは、グレー金利の廃止決定である。中小企業や零細企業の資金繰り
において、消費者金融のキャッシングやその他高利貸しのローンは大きな役割
を担っている。

一方では、それが中小、零細の倒産を早めていることにもつながるのだが、一
時的なカンフル剤としての効果はある。

しかし、上限金利が20%に制限され、利幅が薄くなると、消費者金融を始め高
利貸しも、リスクの高い顧客には貸し出さなくなる。資金繰りに窮した中小、
零細は倒産すると言う理屈だ。

さて、こうしてみると、2007年の倒産件数は引き続き増加するのか、それとも
再び減少に転じるのか、判断の難しいところである。しかしながら、結論なし
のメルマガではつまらないので、ここは大胆に予想してみたい。

ちなみに、2006年の倒産件数は増加すると年頭から予想していたが、これは見
事に的中した。しかし、2005年後半前からその兆候があり、2006年は予想し
やすい年だったといえる。

2007年の倒産件数は再び減少に転じる。理由は円安などが一因で輸出主導の大
企業の業績が引き続き好調で、波及効果が中小、零細企業に及ぶと見るからだ。

ミクロなところでは、内部統制の整備にかかる企業の支出が増え、関連サービ
スを提供するコンサルティング、IT関連、教育関連が潤うはずだ。

いざなぎ景気を超した好景気は、そろそろ個人消費にも波及するだろう。極め
て個人的な感覚では、都内の手頃な価格帯のホテルの宿泊が取りにくい、いつ
も使っているタクシー会社が深夜につかまらないなどの変化を感じる。

いずれにしても、これは2007年1月時点での予想であって、4月ぐらいにな
ればより傾向が鮮明になるのではないか。そのあたりでもう一度、倒産動向に
ついて取り上げてみたい。

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◆今日のまとめ◆

(1)2006年の倒産件数は、13,245件で前年対比で1.9%増加し、負債総額は
12年ぶりに6兆円を割った。

(2)中小、零細企業の倒産が多い、倒産件数の全体に占める破産の比率が高
い、直近3ヶ月の倒産件数は減少しているなどが特筆すべき点。

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「中国における見積ビジネスのリスク」

2007年1月18日付けの日経新聞の報道によれば、中国、大連のショッピング
センター建設代金の未払いの債権回収の訴訟で、債権者である清水建設の敗訴
が確定した。

本訴訟の一審の報道については、以前にこのメルマガでも取り上げたが、もう
一度事件を整理してみよう。

ニュースで学ぶ与信管理と債権回収(2005年3月9日号)
http://blog.mag2.com/m/log/0000065645/105204125.html

2004年に清水建設が中国の大連で受託した「マイカル大連商場」の工事費の未
払いを巡り、大連国際商貿大廈を相手取って中国で訴訟を提起した。

総額154億円の工事代金は4回の分割支払いであったが、4回目の代金に当た
る38億5千万円相当が未払いとなっていた。

遼寧省の高級人民法院における一審の判決結果は、清水建設の全面敗訴。それ
どころか、逆に清水建設に対して過払いがあったとして、約17億円の返還を
命じた。これが2004年12月29日。

※今回の報道では約20億円の支払いを命じられたとなっており、金額が増加
している。

清水建設はこれを不服として、北京の中国最高人民法院に上訴した。このこと
が日本で報道されたのが、2005年の3月。

中国では一審が6ヶ月、二審が3ヶ月で結審しなくてはならない。延長しても
最長6ヶ月。もし、この報道の時点で清水建設が上訴していたとしたら、二審
の結審は2006年12月26日なので、約2年という異例に長期化した訴訟だっ
たことになる。

清水建設のコメントは次の通り。

「契約も残高確認書も全く無意味という事態は経験がなく、どうにも理解し難
しい判決」

個人的には全く同感であり、清水建設の担当者の憤りはよく理解できる。

清水建設は、遅延発生後なのか決算時期なのか定かではないが、どこかの時点
で残高確認書を取得していたようである。

つまり、債務者(中国企業側)は契約時に契約書を締結していたばかりか、そ
の後も債務を書面で承認していたことになる。

今回の事件を中国における地方保護主義の典型的な事例と片付けてしまうのは
簡単だが、もう少し掘り下げて考えてみたい。

中国企業側の主張は、工事代金の154億円は概算に過ぎず、第三者機関の鑑定
結果によれば、実際は多く支払いすぎていた、だから4回目は支払っていなか
ったというものだ。

ここでポイントとなるのは、契約を締結した工事代金が概算(見積)に過ぎず
と言う点である。実は、中国人には目に見えないものの代金を見積もると言う
概念が希薄である。

まだ、建物が完成していない工事代金を初めから見積もる行為が理解できない
部分がある。こうした中国人独特の考え方が、最高人民法院が中国側の主張を
全面的に認めた背景だと言える。

中国において、見積ベースに契約を締結する企業は今回の訴訟を一つの教訓と
して、対処法を施すべきである。

一例としては、「工事完了後に判明する実際にかかった費用に関わらず、債務
者は契約金額を支払う義務があるものとする」と言う趣旨の条項を盛り込むこ
とが考えられる。

しかし、こうすると、追加代金の請求ができなくなる可能性がある。そこで、
「本契約締結時の仕様書にない工事にかかる代金については、債権者は請求す
ることができる。債務者はかかる追加代金の支払義務がある。」と記載すると
ことも大切だ。

世界最大の小売業であるウォールマートも中国の政治力には勝てず、同社では
異例の労組結成を中国で最近認めた。中国市場の魅力はかくも大きいと言う証
左だ。

一方では、3月に開催予定の全人代では、いよいよ私有財産の所有に関わる物
権法が成立する見通しである。物件法が成立して初めて、中国では法的に財産
の私有が認められたことになる。

魅力ある市場として中国ビジネスを拡大してゆくのであれば、予想もせぬリス
クや数々の理不尽とも対峙する覚悟が日本企業にも求められる。

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◆今日のまとめ◆

(1)大連のショッピングセンター工事代金の未払いに関する債権回収の訴訟
で債権者である清水建設の敗訴が確定した。

(2)中国において見積ベースで契約を締結する企業は今回の訴訟を一つの教
訓として、見積もりベースで契約するビジネスのリスクを再認識すべきである。

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「動産担保の評価基準」

2007年元旦の日経新聞の報道によれば、経済産業省は金融機関や大手商社など
と共に、動産担保融資の評価基準の統一に着手する。

中小企業の経営支援として資金調達の多様化を促すのが狙い。同省は平成17
年9月よりABL研究会を設置し動産担保の活用等の研究を進めてきた。

同省は動産担保融資を普及させるため、「動産鑑定士」の資格制度の創設や、
信用保証協会の融資保証の担保に動産を加える意向を発表している。

同省は2007年4月に「ABL(動産担保融資)協会」を設立し、動産担保融資
の評価基準の策定を始める。協会には金融機関、大手商社、リース会社、動産
評価会社なども参加する予定。

動産担保融資とは、不動産を担保とした融資に対して、売掛債権、在庫、機械
設備などの動産を担保にした融資である。英語ではABL=Assets Based
Lendingと呼ばれる。

不動産融資が絶対的な地位を占める日本と違い、米国ではかなり以前からABL
が普及してきた。融資のみならず商取引の担保も含めると、動産担保が大半を
占める国が海外では多い。

日本でも動産の担保制度は以前から存在していたが、不動産担保における登記
のような明確な第三者対抗要件の具備方法がなかった。債権者が在庫の棚にネ
ームプレートつけたり、機械設備に公示札を立てるなどの手法では、二重譲渡
や担保価値毀損などの問題があった。

なお、売掛債権については、平成10年の法改正により登記による第三者対抗
要件の具備が可能となっていた。登記が唯一の取得手段ではなく、他にも取得
手段が存在するため、やはり二重譲渡の危険性は存在するが、登記が最も疑義
の生じにくい取得手段であることに変わりはない。

2005年10月に動産担保の公示制度が施行されたことで、第三者対抗要件が登
記制度によって整備された。この法改正でABLの普及に弾みがつくと見られて
いたが、実態はそうではないようだ。

奇しくも2007年1月11日の日経新聞に、動産担保融資が地方で急増と記事が
あった。しかし、記事をよく読むと地方の金融機関が2006年度上半期に実施
した動産担保融資は55件と書いてある。確かに、前年対比では2倍なので急
増かもしれないが、年間でも100件程度に過ぎない。

既にある程度市民権を得たと言える売掛債権の譲渡担保融資と合わせても、金
融機関全体の総与信に占める割合は1%にも満たないはずだ。

しかし動産担保が、各方面から脚光を浴びていることに変わりはない。背景に
は中小企業の資金調達を多様化しようという政府の意向と、中小企業に対する
確実な債権保全を求める債権者側の根強い要望がある。

2006年には商工中金が豚1万頭を担保に2億円、輸入ワインを担保に5千万
円を融資した案件が話題となった。また、みずほ銀行はICタグを活用して在庫
を正確に管理し、動産担保融資に活用する仕組みの検討を始めた。

動産担保に関するニュース一覧
http://creditmgr.livedoor.biz/archives/cat_1398448.html

あるいは、世界最大の動産担保売買会社であるゴードン・ブラザーズが、日本
政策投資銀行の出資を受けて日本法人を設立した。

こうした動きに加えて動産担保評価の基準がある程度統一されると、動産担保
融資の普及に弾みがつくのはもちろん、一般の事業会社にとっても与信取引に
おける確実な債権保全策の一つとなるはずだ。

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◆今日のまとめ◆

(1)経済産業省は「ABL(動産担保融資)協会」を設立し、動産担保融資の
評価基準の統一に着手する。協会には金融機関、大手商社、リース会社、動産
評価会社なども参加する予定。

(2)動産担保評価の基準が統一されると、動産担保は一般の事業会社にとっ
ても与信取引における確実な債権保全策の一つとなる。

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