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「米国の債権回収事情」

サブプライム問題に端を発した米経済の後退が鮮明になり、影響を受けた日本
は急激な円高と株安のダブルパンチを受けている。

ほんの7ヶ月前までは1ドル120円近くだったのが、一気に100円を突破し今
では97円77銭(3月17日終値)である。30円超の差額は相当なものである。

輸出主導型である自動車業界への影響は顕著である。1円の円高による営業利
益段階での減益要因が、トヨタ、ホンダ、日産、それぞれ、350億円、200億
円、120億円になるとも言われている。

一方、新日鉄など原材料を輸入する企業にとっては、円高は増益要因になるわ
けだが、大口需要家の自動車メーカーが減益になれば、その影響を受けないわ
けには行かない。

また、先日発表されたJPモルガンチェースによるベアースターンズの救済合
併は大きな波紋を金融界に投げかかけた。11日には1兆7千億円もあった点と
現金が、同社に対する急速な信用不安の高まりでわずかで2日で底をついたと
いうから、今の米金融機関を取り巻く疑心暗鬼は相当なものだ。

JPモルガンチェースが発表したベアーの買収額は1株当たり2ドル。実に、
前日の終値の15分の1という破格であった。市場を安心させるどころか、サ
ブプライム問題の根深さを市場に印象付ける結果となった。

そんな中、3月14日付のニューヨークタイムズに興味深い記事が出ていた。

Debt Collectors Try to Put on a Friendlier Face(優しくなった債権回収業者)
http://www.nytimes.com/2008/03/14/business/14collect.htm

この記事によれば、米国全体では、失業者数が過去10年間で23%増加する中、
債権回収業界は急成長してきた。ここで言う債権回収業界とは、いわゆる
Collection Agency(債権回収会社)だけではなく、債権回収専門の弁護士も含
む。

クレジットカードやローン等の返済を4ヶ月以上延滞している債務者は約700
万人も上り、いわゆるITバブルが崩壊した2001年の以降では2倍に増加した。

一般的には、好景気には支払遅延や延滞は減少する傾向がある。しかし、過去
数年間の米景気拡大局面では減少どころか、逆に増加したことになる。

なぜだろうか。

今回の景気拡大が好調な企業業績だけでなく、住宅価格の高騰による住宅の担
保価値増加を背景にした個人の消費意欲拡大に負うところが多かった。

つまり、担保価値増加分で新たに借入をし、消費に回していたわけで、純粋な
金融資産の増加や、個人所得の増加分を超えたところで、支払能力を超える無
理な購買をしていたことになる。

その結果、延滞の増加につながったのではないか。

また、プライスウォータークーパースの調査によれば、2005年に15万社の債権回収会社や弁護士が、回収代行の依頼を受けたり、買い取った債権額は514億ドル(約5兆1400億円)に上る。

調査対象の15万社の基準が分からないが、これには上場している大手の債権
回収会社から個人事業主の債権回収業者も含まれるはずだ。

過去数年間の米景気拡大を背景に、債権回収業界は急成長してきたことになる。

巨大化する回収業界に対する世論等の風当たりも強い。FTC(米連邦取引委員
会)が2006年に受けた業界への苦情は69,204件にも上り、2001年から4倍
以上となった。コンプライアンス無視した一部の会社が、回収時に債務者に罵
詈雑言を浴びせたり、脅かしたりする現状があるのだ。

確かに、米国の書籍などを見るとHow to Damp Collectors(回収業者を撃退す
る法)という類の本が実に多く出ている。日本と違ってそれだけ、身近な存在
であるということ、また嫌な経験をした人も多い証拠だ。

こうした苦情が社会問題化するにつれ、業界に対する規制や法律を強化しよう
という声も出始めている。

こうした世論の高まりを敏感に察知し、ロビー活動を開始する債権回収会社も
出てきている。一方では、業界では回収先を従来debtor(債務者)と呼んでい
たが、customer(顧客)と呼ぶようになった。

また、Collectorとひとまとめに呼ばれてしまう債権回収を専門とする弁護士の
間では、債権回収会社に勤務する高卒で何の資格もない契約社員と同じに扱わ
れてはたまらないと、一般のCollectorとCollection Lawyerの差別化を図ろう
とする動きもある。

本格的な景気後退期に入った米国では、支払遅延や延滞はますます増加するは
ずだ。必然的に、債権回収業界に依頼される案件数も増加することになる。こ
うした時期だからこそ、業界としての使命感や倫理観の向上が強く望まれる。

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◆今日のまとめ◆

過去数年間、米国の債権回収業界は急成長を遂げてきた。その一方では、強硬
な回収に対する苦情も増加した。業界に対する法規制を強化しようと言う声も
ある。こうした世論の高まりを受けて、自主的に債務者に対する対応を見直す
会社も出てきている。

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